覚醒者3号
やがて俺の番。

「はい、じゃあ右腕の袖をまくってね」

顔と同様可愛らしい声で言う女性…黛さん。

俺は特別注射が苦手という訳ではない。

ためらう事なく右腕を出す。

黛さんは手際よく俺の右腕にゴムチューブを巻き、血管を浮き出させた後で消毒する。

「じゃ、ちょっとチクッとするからね」

ニコッと微笑んだ後、針を刺す。

腕の良い人の注射は痛くないというが、それが確かならば、黛さんの注射は殆ど痛くなかった。

痛みを感じたのは針を刺した時くらいだろうか。

…恐らくはワクチンなのであろう、注射器の中の薬品が俺の体内に流し込まれ、黛さんは針を抜く。

そして止血兼消毒のガーゼを針の跡に当てたその時。

「……!」

突然。

黛さんの顔色が変わった。

明らかにそれとわかるほど、彼女の動揺はありありと表情に表れていた。

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