覚醒者3号
何とか囲みを突破した私達。

さっきまで私達がいた廃車の檻は、完全に押し潰されてしまっている。

しかし安心したのもつかの間。

「きゃあっ!」

再び私達の頭上に廃車の雨が降り注いだ。

五台、六台、いや、もっと!

次々と落下してくる車の形をした凶器。

戦闘に適した能力を持たない私は、ひたすら逃げ続ける事しかできない。

そして、1号もそれをわかっている。

わかっていながら一思いにとどめは刺さない。

嬲るだけ嬲って、私が絶望に嘆く様を見届けたい。

足掻くだけ足掻かせて、命乞いする様を見てみたい。

これは1号の嗜虐心を満足させる為だけのゲームなのだ。

「!」

また四方を廃車で囲まれた。

今度は囲まれたまま、頭上から数台の廃車が落下してくる。

「くっ!」

瞬間移動で脱出する。

「はぁっ…はぁっ…はぁっ…はぁっ…」

情けない。

たった二回の瞬間移動で、私は既に息が上がっていた。

…その姿を、1号はつまらなさそうに眺めている。

「もう終わり?2号…もっと派手にもがいてちょうだい…私が楽しめないわ」

「…変態っ!!」

悔しくて、私は罵声を浴びせる。

その言葉に1号はまた薄笑みを浮かべて。

「死ねよ、虫けら」

汚い罵りの言葉と共に、一気に数十台の廃車を落下させてきた…!!

< 57 / 66 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop