初恋は一言から
カチャカチャと静かな空間で食器を動かす音が聞こえるわけもなく。

優雅な時間を過ごしているわけでもない。

そんなこの夜ご飯。


ラーメンを啜る音。

カレーをスプーンで食べる音。

ハンバーグのジュウジュウ焼ける音。


そんな賑やかな音の中、あたしは1人で和食セットの味噌汁をすすっていた。

「いやー凄い食べるね」

「魏姫も食べる?」

「いや。和食セットで十分だから。そんなカロリー高そうなの食べたら胃にもたれそうだし」

魅火流からの心遣いを流し再び味噌汁をすする。

この味噌汁、無駄に美味い。

インスタントじゃない。

本物、しかも作りたての味がする。

「作りたての味…」

「この寮のルームサービスは注文があってから作って、出来たてを持ってくるんだ」

「だからぁとっても美味しいんだよぉ〜」

「「なるほど」」

それは美味しいわけだ。

ガツガツものすごい勢いで食べる目の前の男子3人をみてふと思った。

こんなのがたくさんいるここの食費、とんでもない額になってるな。

1人でこんなに沢山の量を毎日食べてるということはそういうことだろう。

あ、たくあん美味しい。

「魏姫ぇ、その…たくあんくれない?」

「何でですか真輝音先輩。あなたにはハンバーグというものがあるでしょう」

「そりゃあ、そのたくあんがもの凄く美味しいからに決まってるじゃん。かなり人気なんだよ」

このたくあん、恐るべし。
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