薬指の秘密はふたりきりで
「課長に用があって来たんです。今話しかけても大丈夫でしょうか?」
「いいと思うよ。締めも終わったから、落ち着いてるし」
「じゃあ、行ってきます。・・行こ」
二人して課長のデスクまで歩いていって、話をしてる。
課長の小さな目がだんだん大きくなって、しまいには立ち上がって、あはははは!と大声で笑って男子社員と握手してる。
暫くすると、課長の嬉しげな声が課内に響いた。
「おい、みんな、聞いてくれ!水野君が結婚するそうだ!」
ワッと声が上がる。
あちこちからおめでとうの声がかけられて、課内が一気に華やいだ。
拍手を浴びる優花の照れた顔は、とても幸せそう。隣にいる彼も、みんなに話し掛けられて、照れ隠しに頭を掻いたりしている。
優花は、各デスクに小さな包みを配りはじめた。
結婚が決まると、大抵の女子社員は、こうして世話になったところに幸せ報告にまわる。
「――入社当時、先輩にはお世話になりました」
「優花、おめでとう!良かったね!」
「ありがとうございます。あ、彼は同じ企画課の先輩で、長内君です」
「長内裕也です。よろしく」
「佐倉です」
真面目そうで、笑うと目がなくなって、とても優しそうな人だ。
優花は、交際2年目の記念日に、彼が結婚しようって言ってくれたんですーと、幸せそうに笑う。
「次は、先輩ですね。これ、どうぞ」