薬指の秘密はふたりきりで
小さな包みを渡してくれながら、内緒の声で言ってウィンクしてくる。
「まだ続いてるんですよね?」
「うん、そうなんだけどね。私は、いつになるかなあ?」
あははと、曖昧に笑い返す。
――――結婚、か。羨ましいな。
友人の冴美といい優花といい、まわりの子たちはみんな幸せを掴んでる。
亮介はどうなんだろう。
私との将来のこと、頭の隅っこにでもいいから、考えてくれてるんだろうか。
二人とも、もうすぐ30歳なんだけどな。
優花も寿退社を選んで、彼に尽くすんだって言っていた。
これで、私の知ってる後輩は、紗也香以外はみんな寿退社してしまうことになる。
私だけ、置いてきぼり――――
・・・あ、まさか。
神田さんが言ってた“かわいそうで覚悟すること”って、このことかな?
でも、覚悟って?
イマイチ意味がわからない。
「きゃーん。先輩、これマカロンですよ!可愛い。私、大好きなんです。お茶淹れてきまーす!」
うきうきと席を立つ紗也香に苦笑しつつも、白いレース模様の綺麗なラッピングをあけると、中には、紅と白のマカロンが1つずつ入っていた。
「綺麗・・・幸せの色だわ」
頬張ると、今日の二人みたいに蕩けるように甘くて、とても美味しかった。
私も、優花みたいに、いつの日か、亮介とまわれたらいいな――――