薬指の秘密はふたりきりで
少し、かりるよ?

優花の結婚報告から日が経ち、今はもう月の下旬。

冴美の結婚パーティの日が近付いてきている。


「そろそろ行けるかどうか確認して、冴美に返事しないといけないな」


あのとき昼にlineで話してから今日まで、亮介の声を聞いていないし、姿を見てもいない。

たまにlineがはいって、元気だってわかってほんわか嬉しくなるけれど、会ったり話したりする喜びには全然負けるのだ。


最近、少しのことでイライラしてしまう自分がいる。

お気に入りのアロマオイルもバスソルトも、癒し効果がなくて全然ダメだ。

却って虚しく思えてしまうから、始末が悪い。


ビタミン不足?

カルシウム不足?

仕事のストレス?


違う。どれも違う。

これは、まるっきりの亮介不足。

彼に、会えないせい。


この状態は、福岡出張の時よりも酷い。

同じ社内にいるのに、亮介まで近いのに、とても遠くに感じる。


「会いたいな・・・」


イライラを増す原因は、他にもある。

彼のチームが残業してることを知って、女子社員たちが代わる代わる差し入れをしているらしいのだ。

手造りのサンドイッチとか、お弁当とか。

あなたたち順番決めてるの?ってくらいに、きっちり日がわりで。

翌日にお弁当箱を引き取りに行くと必ず中身が空っぽになってるから、ちゃんと食べてくれてるって、一部の女子社員の間でブームになっている。と、紗也香が教えてくれた。
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