薬指の秘密はふたりきりで

亮介が美味しそうに食べてるところを想像すると、ムカムカモヤモヤする。

彼の為に愛を込めたお料理をつくるのは、彼女である私だけのはずなのに。


「亮介のおバカ!」


私だって我慢したくないし、自由に会いたい。

けれど、邪魔して嫌われたくないという思いが先にたつのだ。

だって、前に“お弁当作って、持って行っていい?”って聞いたら“来るな。気が散る”って言われたんだもの。

そんなの、もう、行けないじゃない・・・。



就寝前、苛立ちを紛らわせるようにハンドケアに没頭する。

いつもより時間をかけて、念入りに指先をマッサージする。

最近は、特に、左手の薬指に力が入ってしまう。

一通りマッサージしたあと、この指だけは、もう一度してしまうのだ。


だって、ここに欲しいものがあるんだもの。

亮介は全然気付いてくれないけれど・・・。

良いものでなくたって構わない。

亮介がくれるものなら、おもちゃだって、毛糸で編んだものだって、大切にできる自信がある。


告白は、私からだった。

だから、今度は亮介から――――・・・。


ずっと、待ってるのにな。

でも。地味な私が彼女になれただけでも奇跡的なことなのに、それ以上を願うのは、贅沢なことなのかな?


欲しいのは、言葉だけなのに――――
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