薬指の秘密はふたりきりで
「や・・・」
わたわたしてると、目の前に腕が伸びて来て、ぽすん、と体が受け止められた。
「平気?」
「うん。ありがとう」
どんくさくて、恥ずかしすぎる。
ごめんね、と言って離れようとしたら、反対にぐっと引き寄せられた。
「この先もカーブが多いだろ。危ないから、このままでいて。俺が支えるから」
「・・・はい」
亮介の、どんな揺れにも微動だにしない力強い腕と体のぬくもりが、とても心地いい。
ドキドキすることも多いけれど、安心して身を任せられるのは、亮介だけだ。
電車の窓の外は、ビルばかりが続いていた街並みがすっかり消えていて、山ばかりの緑濃い景色に変わっている。
いくつかの駅を通過して、トンネルを通り抜けるとすぐに目的地であるM駅に着いた。
そこから送迎バスに揺られて30分して、ようやく会場に着いた。
電車に乗っていた時間も合わせると、約1時間半の道のりだった。
「わあ、素敵!」
道からは、こんもりと茂る木の向こうに、白い英国風の家が見える。
係りの人に案内されるままアーチ形の門を潜って中に入ると、そこはイングリッシュガーデンだった。
「・・・立食形式って、こういうことだったんだ」
広い芝生の部分に白い丸テーブルが等間隔に置いてあって、白いクロスが掛けられた長テーブルには料理がたくさん並べられている。
既にたくさんの人がいて、各々塊を作って談笑していた。
冴美はどこにいるのかと見回すと、白い鳥かごみたいな建物のところに、人が群がっているのを見付けた。
きっとあそこにいるんだ。
近付いて行くと、白いタキシードを着た新郎である悠木さんの横で、純白のウェディングドレスを着て幸せそうに笑う冴美がいた。