薬指の秘密はふたりきりで
たまには、来る?
『先輩、それならプリザーブドフラワーにしたらどうですか?家でわりと簡単に出来るそうですよ。というか、生花だったんですね?』
ブーケの保存方法を悩んでる私に、紗也香はネットで動画検索すれば作り方が出てますよと教えてくれた。
だから、今、検索して見てるのだけど。
「む・・・難しいじゃないの」
まず、液とか入れものとかの道具をそろえなくちゃいけないし、結構日にちがかかるし、緑色のテープをくるくるしたりして、フラワーアレンジメントの技術も必要だ。
第一、花が新鮮じゃないと上手くいかないらしい。
結婚パーティの日からすでに2日経っている。
まだ萎れてはいないけれど、新鮮とは言い難い。できるならこのままの状態で保存したかったけれど、どうも無理っぽい。
綺麗なうちに、何枚も画像を撮って保存した。
冴美、ごめん。残念ながら、私にはこれくらいしかできないよ。
「でも、夢みたいだったな・・・」
綺麗な庭と美しく着飾った人たち。
美味しい料理があって、亮介が隣にいてくれて、おまけに、こんな思ってもいないお土産が貰えて。
結婚パーティというのは、現実から離れた夢の塊なんだと思えた。
実際、あそこから戻ってきた日常は、満員電車の中も会社も殺伐としていて、リーダーである亮介には再び残業が続く日々が始まり、私にも締めが始まってお互い忙しくなる。
あのときバスで寝てしまった亮介は、駅に着いてもなかなか目を覚まさなかった。
熟睡していた。体も心配だし、もっと近くで寄り添って支えたいのに、それは、許してもらえないのかな。
彼の為に、何かしたい。
切実に、そう思う。