薬指の秘密はふたりきりで
ぼそっと呟いて、小さくため息を吐く。
亮介がそう言うのなら、断る理由がないんだもの。
明日にでも、詳しい話聞いてみようかな。
どんなふうに撮るのか聞いたうえで、どうしても嫌だと思ったら断ればいいもの。
顔をあげると、既に珈琲を飲み終えた亮介が、私をじっと見ていた。
「あ、ごめん。片付けるね」
空のカップに伸ばした手が、いきなり、ぱしっと捕まえられた。
私を見つめてくるその目が、さっきまでと全然違う。
怖いくらいに真剣で、握ってくる手がどんどん強くなって、しかも叙々に引っ張られてて――――
「――りょ、亮介?」
「・・・詳細決まったら、教えて。いいね?」
「はい」
返事をしたら引張るのは止めてくれたけれど、手は離してくれない。
唇を引き結んで、私をじっと見つめたままでいる。
「亮介、痛い」
「っ、あぁごめん。悪かった」
まるで気づいてなかったかのように驚いて、慌てて離して、優しく手を撫でてくれた。
「もう、大丈夫だから」
普段にはない態度で、心臓が大きく脈打つ。
急に、どうしちゃったのだろう・・・。
カップを片付けて戻ると、亮介は、冴美からもらったお土産をみているところだった。
「何が入ってた?」
声をかけると、見ていたカードみたいな紙をサッと仕舞って、土産物を見せてくれた。
「うわあ、素敵!これ、キーケース?」
細かい刺繍のある革細工のそれは、鍵が収納出来るもので、折り畳みを開けば4個の金具がついていた。
「・・・丁度、新しいのが欲しいと思っていたんだ。お礼言わないとな」
「あ、じゃあ、私から言っておくね。近いうちに会うことになるから」
じゃあ、頼む。そう言って笑む亮介はいつも通りだ。
そのあと眠るまでの時間は、冴美から聞いた旅先の話をして過ごした。