薬指の秘密はふたりきりで
嬉しくて滲む視界の中、亮介が私の薬指にゆっくりと指輪を入れていくのを見つめる。
「次は、本物を嵌めるから」
「・・・ほんもの?」
それって・・・まさか・・・。
亮介はポケットから小さな箱を取り出して、私に差し出した。
「悠木さんの店まで、これを、取りに行っていたんだ。受け取って欲しい」
ビロード地の紺色の箱が、亮介の手の平にのせられている。
震える手で受け取って蓋を開けると、ダイヤの指輪が煌いていた。
「これを、私に・・・」
目の前にあるものが信じられなくて、指先でそっと指輪を撫でてみた。
硬質の手触りは、確かに、それがそこにあることを主張してくる。
胸が熱くなって、小箱を両手でぎゅっと包み込んだ。
「私は、亮介に愛されてるって思ってもいいの?」
「言わなきゃ、分からない?」
大きく頷いてみせると、亮介は頬をほんのり赤くして、口に手を当てて小さな咳払いをした。
「傍にいるだけであたたかい気持ちになれる。一緒にいると触れたくなる。笑顔を見るだけで嬉しくなる。涙を見れば守ってやりたくなる。そんな気持ちになるのは、彩乃だけだ。これからも、俺の傍にずっといて欲しい。一生、俺が彩乃を守るから」
本当に、そんな風に思っててくれたの・・・?
私も言葉を返したいけれど、胸がいっぱいで何も言えなくて、ただじっと見上げていると、亮介の顔がぐっと近付いてきた。
思わず目を瞑った私の耳元で、彼の小さな声が鼓膜を擽る。
「誰よりも、愛してる」
知らずに涙があふれ出て、自然に腕が動いて、亮介の背中をぎゅっと抱きしめていた。
「わかった?」
「うん・・うん・・うれしい」
「それで、返事は?」
腕を解いて、亮介と真っ直ぐに向かい合う。