薬指の秘密はふたりきりで
充電してもいい?
あれから、もう、5年経つ。
社内恋愛を良しとしない社風なので、付き合ってることは内緒にしている。
バレたら、どちらかが異動させられてしまうのだ。
しかもそれは男子社員の割合が多くて、遠距離恋愛をしてるカップルも少なくない。
今までも、男子社員が東北の事業所までとばされたりとか、エリート社員でも「え?そこに?」って、随分思い切った場所に行かされてしまってる。
だから、私と亮介のことを知ってるのは、ごく親しい人だけ。
後輩の紗也香はその内の一人。
『先輩、誰にも言わないで下さいね。私、営業部の彼と、付き合いはじめたんです~』
二人で飲んでる時、じゃーん!って効果音がつきそうな感じで話してくれて、その時に私も打ち明けたのだ。
『私も。誰にも言わないでね、システム開発課の長谷川亮介と付き合ってるの』
って。お互いに大袈裟にびっくりし合って、そのあと大笑いして、誓いの意味を込めて乾杯しなおしたっけ。
特に、紗也香の方は『全然気付きませんでしたぁ』って、何度も感心していた。
だって、亮介が地方の事業所に行ってしまったら寂しくてたまらないもの、社内ですれ違っても、ものすごく頑張って“関係ありません”って顔をしてるのだ。
まあ地味女だから、誰も気付きも疑いもしないっていうのが、ほんとのところかもしれないけど。
そんな会社だから、寿を願って止まない女子社員たちは、却っておおっぴらにしたがる。
理由は、その方が結婚へ繋がりやすいから、らしい。
実際、会社にばれたせいで寿に至ったカップルも多い。
だから、自然にエリートなイケメン社員に人気が集まるわけで。
その中でも、女子社員人気ダントツNo.1の亮介を狙う子が、未だに尽きなくて――――