30歳の異世界トリップ
赤い髪のおじ様
リアが出ていき少したつと心が落ち着いてきたのか、周りを観察する余裕が出てきた。
雪のせいでグショグショに濡れてしまったリクルートスーツはいつの間にか脱がされて、代わりに真っ白なワンピースを着てた。胸元にレースがあり、パフスリーブのそれはアラサーが着るにはかなり可愛すぎる代物だ。
う。これは…無理があるのでは…?絶対私に似合ってないよ!
助けてもらって、あまつさえ新しい洋服まで着させていただいてるのに文句は言えないけど…うぅぅ。
布団の中で身悶えてると、コツ!コツ!と、音がした。
その音を視線で探すと、ドアと真向かいに大きな窓があった。
…?何かぶつけてる?
コツ!
!石だ!誰かが石を投げてるんだ!
ヨロヨロとスプリング十分なベットから這い出て窓に近づくと、そこにはこちらに来て初めて目にした雪がまだまだしんしんと降り続けていた。
あまりの白一色に目を奪われてほぅ…と、息を吐き出すと外から誰かに呼ばれる声がした。
「おーい!おねえさーん!」
ハッとして、声のする方を見ると男の子が満面の笑顔でこちらに手を振っていた。
誰だろう…?私に手を振ってるんだよね?この家の子かな?
防寒具を着込んでいるせいもあり、はっきりとどんな顔かもわからないもののあまりにもブンブン手を振り続けるものだから、私も思わずクスリと笑みが出て自然と手を振り返してた。
「あ!笑った!おねえさーん!もう大丈夫なのー?」
男の子は心配そうな眼差しで私を見つめてた。
コクリと頷くと心からホッとしたように笑った。
うわぁ…可愛い。
「僕はスヴェン!今度またゆっくりとお話ししようねー!」
スヴェンと名乗った男の子はもう一度ブンブン手を振り、家と反対の森の中に消えていった。
不思議な子…けど、なぜか暖かい気持ちになる。
また、会えるかな?
スヴェンが消えた森をしばらく見つめていると、今度はドアからコンコンと音がした。
「サキ様。失礼します。」
リアだ。
リアの声に振り返り「はい。」と返事をすると、
カチャリと開いたドアからリアと、一人の男性が入ってきた。
「サキ様。こちらが我が主レイノール様でございます」
レイノールと呼ばれた男性は緋色の瞳でじっと私を見つめていた。
赤い瞳に赤い髪…
綺麗に通った鼻筋、服の上からでもわかる鍛え上げられた筋肉。
凄く格好いい人…こんなイケメン見たことないよ。
突然のイケメンに声をなくして惚けていたら
「サキ…さん。体はもう大丈夫かな?」
と、優しく話しかけられた。
「っ!は、はい!もう大丈夫です!助けてくださりありがとうございました!」
顔を真っ赤にし、しどろもどろになりながら一気に捲し立てた。
そんな様子の私に驚き目を見開き、ふっと優しく微笑まれた。
うぅぅー恥ずかしい
いい歳して、お礼を言うのも忘れて見惚れてたなんてーー!!
「そんなに、固くならないでください。私の名前はレイノール。この屋敷の主人です。」
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