十日目の判決 -完-







はぁ、聞くか。全面スピーカーの話を。


「何で浮気してると言える?」

「いやぁ〜さぁ〜?ケケッ」


ニコニコと悩む表情をするけど、そんな表情私初めて見たぞ。人間って笑顔で悩めるもんなんだな。


「結希ちゃんの様子がさぁ最近おかしいんだよねぇ〜?おれ、優しいからさぁどうしたのか聞かないしぃ〜おれに対してだけ態度が違うんだよねぇ〜?ハハッ!」


それ、君に嫌気がさしてきたんだろ。結希はやっと夢の中から醒めたんだよ。結希、大丈夫だぞ。妖怪ケケケッの全面スピーカーと無理して付き合わなくていい。

ちょっと魔が差したんだよな、うんうん。




でも。私がいつも隣で見る結希は変らない姿で普通に彼氏の話を私にするし、妖怪ケケケッ…妖怪スピーカーを嫌になったって訳ではなさそう。



「あとねぇ〜!ハハッ!結希ちゃんの様子がおかしくなる前にぃ〜。おれ見ちゃったんだよぉ。ケケケッ!結希ちゃんが他の男と一緒にいるところぉ〜!」


「んなバカな。頭の次に目も悪くなったのか」

「ざぁ〜んねぇ〜んっ!おれはとっても健康体でぇ〜す!ガハハハハッ!!」


ほんと妖怪スピーカーは何が楽しいんだ。ザ・スマイルをどうにかせぇ。頬の筋肉くんたちがそろそろ休みたいって言ってるよ。


「でもねぇその時ぃ〜結希ちゃんの事はすぐわかったんだけどぉ。ケケケッ!一緒にいた男は後姿だったしぃ〜顔見てないから誰かはわかんないだよねぇ〜!ハハッ!」


なるほど。だから男と一緒に居たことはわかるけどそれが誰なのかはわからなくて男に直接問い詰めるなどの事は出来ない。でも様子のおかしい結希に妖怪スピーカーが直接聞く事も出来ない。ということか。





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