十日目の判決 -完-
この教室には時計の秒針と、
私たちの声しか、音はない。
結希は静かに語り出した。
本当の真実を。
「…プレゼントの事は話したから良いとして。それをきっかけにあたしと椎名くんは頻繁に会話をするようになった。椎名くん、いつもいのちゃんのこと話してたよ。椎名くんね、不安がってた。」
結希は私を真っ直ぐみている。
「最近、いのちゃんが距離を置いてる気がするって…あたしといのちゃんって恋バナとかしないから、何も力になってあげられないけど友達だからいのちゃんのこと少しは分かるかもって話を聞いていたの。」
ひひっと、結希ははにかむ。
「椎名くんは本当にいい人よ、いのちゃんが選んだ人だもん。椎名くんの気持ち、信じて」
信じて…さっきも結希が言った言葉。
「あたしと椎名くんが一緒に帰ってたのをいのちゃんが見た日…何の日か知ってる?」
「…え?」
結希が言うことに思い当たることがなくて疑問の声が出た。
椎名のほうを見ると、椎名は私と目を合わせようとしない。
「いのちゃんが見た日。椎名くん、放課後一緒に帰ろうっていのちゃんを誘って来なかった?」
……正直そんなコト覚えてない。
だけど、椎名が私の教室に来て帰るよーって言ったのを私が先帰るって断ったりしたのは…いつの日か分からないけどそういう事はあった。
「その日はね、5月8日…」
ああ、やっぱりゴールデンウィークがあけた頃だ。
「いのちゃんと椎名くんの記念日だよ、」
「は…?」
「付き合って一年の。」
私は顔を椎名のほうに向けるけど、
椎名の目線は斜め下を見ていて
やっぱり私と目を合わせようとはしない。
どういうことだ。
あの日は私と椎名が付き合って
一年経った日なのか…。
もし椎名が一緒に帰るのを誘っていたとしたら
なんで私、椎名の誘いを断った。
…いまさらだ。