十日目の判決 -完-
「……ごめんなさい、あたし…っ」
また、結希は言葉を詰まらせる。
「私は結希に謝って欲しいわけではない」
お願いだから謝らないでくれ。
「…んーんっ、あたしが悪いの。本当に…。
いのちゃんが先に帰っちゃった後、椎名くんが一人で廊下にいたから声かけて…プレゼント渡せたか聞いたの。そしたら、椎名くん…渡せなかったって言った…」
もう、今にも泣き出しそうだ。
「結希ちゃん!もうっ…」
「あたしが話すっ…あたしが全部言わないとだめ、なの。あたしは椎名くんの話を聞こうと思って、教室に入って…」
結希は椎名に喋らせる間を与えない。
「2人で、放課後話してた。椎名くん…ね、いのちゃんは俺に気持ちはもう無いのかな…ってやっぱり、忘れられてるのかなって…悲しそうだった。すごくすごくいのちゃんを想ってるのが伝わって…あたしまで苦しくなった…っ」
……。
私は何も言わない。
「…っく、…」
ああ、もうダメだ。結希の瞳からは大粒の涙が次から次へと溢れ出した。
結希は泣きたくなんかなかったはずだ。
私は結希に渡したハンカチを結希の手からゆっくり取って、結希の頬に流れ落ちる涙を拭う。
「っ、違うっ…違うのっ」
か細い結希の声は私には届いている。
大丈夫。わかってるから。
結希は素直だ。
「木村と私に隠すの苦しかっただろ」
彼氏と椎名の彼女の私に
黙って隣で笑顔を向け続けるの辛かっただろう。
隠す方も苦しい、仲の良い友達と大好きな彼氏なんだ。
心が痛まないはずがない。
そう、結希の気持ちも考える私は
どこか、客観的なのだろうか。