十日目の判決 -完-
椎名は私を好きなうえで、
結希を好きになった。
…正直、悔しい。
結希は可愛すぎた。私は敵わない。
「結希、」
「……っ…いのちゃん?」
私は少し、微笑んで。結希に優しく話しかける。
「私からこの事は木村には言わない、絶対。
絶対に、言わない。」
結希と妖怪スピーカーはお互いの気持ちが通じ合っているんだ。
妖怪スピーカーを傷付けるようなこと、言ったらダメだ。
「結希も、木村にはこの事は言わなくていい」
世の中には知らないほうが幸せなことがある。
妖怪スピーカーは何も知らなくていい。
ただ、君はゲラゲラ笑っていればいい。
「…でも、」
「早く、涙拭きな。木村に気づかれる、大丈夫だから。」
椎名は俯いていて、髪が邪魔で表情は見えない。
結希、良いんだ。これで。
「いのちゃ、ん…本当にごめんなさい…」
「謝るな。私とまた前と同じように仲良くするのは難しいと思う。だけど、私は結希さえ良ければ友達でいたい。」
わがまますぎるだろうか。
自分でもとても難しい事を言っているのがわかる。
浮気をした相手の彼女と友達だなんて
頭がどうかしてる。うん。
「、うん…っ」
結希は頬を拭って顔を上げると
はにかみ笑顔を見せた。
「…あたし、木村くんを探してくる…」
「わかった、じゃあまた明日な」
結希はそう言うと、木村の分のスクールバッグと自分のスクールバッグを持って教室を出た。
結希は教室の出入り口に向かう前と、教室を出る前の2回私のほうを見て深く長いお辞儀をした。
結希らしい、ありかただ。