十日目の判決 -完-
昼休みは保健室に逃げ込んで隠れた。
いつまでも逃げ切れるなんて思ってない。
私は保健室の先生に失礼しましたと言って廊下へ出た。
午後の授業開始ギリギリまで粘っていたから
周りには誰もいない。
早く、教室へ戻ろう。
そう歩き出した時、
「あっれぇ〜??!!!いのぉ〜!!!!!!」
…お前かよ。
お馴染みの木村くんです。たまには名前で呼んでやろうではないか。ふはは、感謝したまえ。
「こんにちわ〜ぁあ〜!!!」
妖怪スピーカーが挨拶をするから、
私も挨拶をする。大切なことです。
「こんにちわ」
ギャハハハハ!!!と妖怪スピーカーはひと笑いする。相変わらず何がおもしろいんだ。
「そぉ〜いや〜?ケケケッ!結希ちゃんがいののこと心配してたよぉ〜〜?ガハハ!!」
君ら、本当仲いいな。
妖怪スピーカーの言い方から、
昼休みを2人は一緒に過ごしたと考えられる。
妖怪スピーカーは知らない。
だから笑えてる。知ったときも笑うのか、
それは誰にもわからない。
知らない事のほうが良い事がある。
浮気なんて知らなかったら
幸せが続いた家庭はいくらでもあるはずだ。
2人の気持ちが本物なら壊さなければいい。
私は何度もそう思う。
「おれはさぁ〜?詳しいことよくわからないけどぉ〜!!!!!ケケケッ!何か、悩んでたりすることがあるならぁ〜?ウハハッ!!素直になったほうがいいぞぉ〜!!!!!」
ゲラゲラゲラと目の前のやつは笑う。
何も知らないはずの君が言う言葉が、
どんな言葉よりも、
…今の私に一番響いた。