十日目の判決 -完-






今日の授業は全て終わり、
私は椎名に捕まりたくないため早めに自分のロッカーから荷物を教室へと持ってきていた。


帰りの学活が終わり、チャイムがなったら
一目散に飛び出ていけば大丈夫なはず。



よし。

チャイムが鳴る。放課後だ。



チャイムが鳴り終わった瞬間、
教室にいる全員の視線がドアへと向いた。



だって、ドアが開いたから。

教室の出入り口のドアを開けたのは、
椎名だ。…恐るマジ。



7組は終わるの遅いはずナンダケドナー。



運命は私を逃がさないというのか。


無言で椎名は教室の中に入ってくる。
もう一度言うぞ、教室の全部の視線は椎名に注がれている。


何とも言えない空気に静かな時間が流れる。


結希は椎名と私を見て心配そうな表情をする。



私、帰りたい。
逃げ出したい。


10日ほど前の、くつ箱前でのカップル大ゲンカが懐かしい。あれを呑気に聞いていた私が懐かしい。

あのヒステリックバイオレンスは彼氏さんを許せたのか。今度校内で探してみようか。いや、やめよう。


私は椎名から逃げるように教室の外へ出ようと歩き出す。


だけど椎名は逃さなかった。


「待って」


私は無視を決め込む。

だけど、逃げることは出来なくて…

椎名が私の腕を掴むことによってなされた。



結希を視界の端にうつすと、この状況に驚いていた。


教室にいる全員が静かに私と椎名を見守っている。
…むしろ、騒いで茶化してくれたほうが助かるのだが。


この状況、気まずい。

とりあえず。


「はなして」


私は椎名に低い声でそう言った。









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