十日目の判決 -完-
椎名の印象は頼り無さそうな感じ、
だから少し強引な椎名は珍しい。
相変わらず、優しい雰囲気を纏っているけど
有無を言わせないような感じ。
私はもう逃げないから、と
意思表示のため椎名のほうへと向き合った。
椎名は掴んでいた腕を離してくれた。やっぱり逃げちゃおう。…はい、大丈夫です。逃げない。
…ナニ、この修羅場。
教室にいる全員に傍聴されてるぞ。
あからさまに見てくる人はいないけど、
自然に見られてる。
「なんで俺のこと避けんの」
君と話したくないからに決まってる。
椎名が真っ直ぐ私を見るから
私も椎名を真っ直ぐ見る。
どこか胸が高鳴る。
こういう時まで
私の頭の中ではどこか客観的に見ている自分がいる。
いつも私とは違う、
もう一人の私が状況を客観的に見てた。
私の感情は1人のはずなのだが…
…こういう自分がこわい。
「なんで俺にそんな怒ってるの」
「浮気したから」
即答。ここは即答します。
君が浮気するからいけないだろ。
教室にいる人も、今ので状況が読めてくるだろう。
椎名は浮気をした。
たった1回でも、浮気を1回も、
したんだからダメに決まってる。
嫌なんだ。