十日目の判決 -完-
椎名は優しい顔をしている。
結希を見た時と同じような、
すっきりとした優しい顔。
全部、認めて区切りを付けたような表情。
「ああ、俺はいのを傷付けた。ゆるされない過ちだよ。信じなくて良い、だけど認めて?俺、いののことだけ好きだから」
「嘘つけ」
「嘘じゃない、別れようって言われたとき本気で別れたくないって思った。いのが怒鳴ったとき、いのの体が震えているのに気付いて、ただ怒ってるんじゃないってわかったよ、いのの辛さが伝わって…
…いのを苦しめる俺なんかいなくなれば良いって本気で思った。」
椎名は眉を八の字にしてへらっと最後に笑った。
「いなくなればいい」
君なんか今すぐにでも消えてしまえばいいんだ。
君が消えたら醜い私も消えてくれるはず…。
「うん、いのを苦しめて傷付ける俺はいなくなる」
「は?何言ってる?気持ちが悪い」
「いのだって…気付いてるでしょ?だから苦しくて泣けなくて辛い思いしてるんじゃない?」
椎名の低くも高くもない声が私を襲う。
「いの、俺のこと嫌い?」
「嫌いだ」
即答。君なんか嫌いだ。
浮気なんてしてほしくなかった。
しないでほしかった。