十日目の判決 -完-
教室にいるみんなが息をのんで、
私と椎名を見つめているのを感じる。
なぁ、客観的に見れてるか?
もう一人の私よ。そこにいるんだろ?
何も言わない私に、椎名がまた一つヘラっと笑って見せた。
「いの、」
「…うん」
私が返事をすると、椎名は軽く両腕を開いて私のほうへ手をむけた。
「おいで」
椎名の声が私を惑わせる。
どうしたら良いかわからない。
でも…
私は恐る恐る、手を伸ばし
椎名のほうへ近寄ってみる。
私は今、どんな表情をしてるだろう。
パシッと椎名が私の手を握ると、
一気にぐいっと私を引きよせた。
椎名のあの柔軟剤の匂いが私を包む。
そして教室にきゃああああ!と奇声が飛び交った。
おめでとうやらひゅーひゅーと
冷かしなどいろんな声がかかってくる。
椎名はぎゅっと私を抱きしめた。
私は椎名の匂いに包まれて、
ゆっくりと手を椎名の背中に回した。
椎名の胸からドクンドクンと
加速する鼓動が聞こえる。
…安心した。
私の鼓動も高鳴ってゆく。
ああ、こういう事なのか。
もう一人の私よ、思い通りになったな。
椎名の胸に顔を埋めて
私は我慢できず、静かに微笑んだ。
浮気とは何だろうか、
私にはまだ答えは出せない。
浮気をした人にしか、
きっとその答えは出ないのだ。