十日目の判決 -完-
2. 5月14日
結希から聞いたけど昨日は妖怪スピーカーと結希は放課後デートしたらしい。
昨日の耳総攻撃で私に現在頭痛が襲う。結希は平気なのか。あの妖怪スピーカーは凄まじいぞ。
私は机に頭を伏せて横にいる結希を見つめる。
妖怪スピーカーを相手にしていてよくのほほーんっとしてられるな、私が見る限りやっぱり結希はいつもと変らずで、妖怪スピーカーのことを話す表情は幸せそうだし。
…可愛いよな。結希は可愛い。小柄な身長で胸下まである黒髪をいつも耳の後ろで2つに結っていて結希のはにかんだ笑顔は女の私でもきゅんとなってしまうほどだ。
前髪は律儀にちゃんと斜めに2本のピンで留めていて真面目だなぁと感心する。私たちの高校は目にかかるような視界の妨げになる長さの前髪は留めるか切るかしなければならない。それを守っているのは結希くらいだろう。
結希は真面目で誰に対しても優しい。そしてとても素直な性格だ。きっちりしてるけどその真面目さは浮くことなく学校やクラスに馴染んでいる。結希は要領が良い、誰に対しても同じ態度で同じ目線で接する。
私には到底出来ない事だ。
羨ましい、のか…うん。結希が羨ましい。
何度も結希の授業のノートを見た事があるけど、結希の性格がでたきっちりとしていて綺麗だけどどこか女らしさのある字を書いていた。苦手な所には堂々と意味が分からないと赤字で書いてて結希らしくて見た時は笑ってしまった。結希は正直なのだ。
「…ゃん?いのちゃーん?」
「……ん?」
私がずっとぼーっとしていたのか、結希が私を呼んだ事に気づいた。
結希の表情を見ると顔に大丈夫?と書いてある。
「大丈夫だ、どうした?」
「電話、鳴ってるよ?」
結希に言われて気付くと、私のスマホが机の上で揺れていた。
「ありがと」
結希に礼を言い体を起こして電話に出る。
あ、発信者確認するの忘れた。