十日目の判決 -完-







「いの、見た?購買の伝説の水分補給!」

「見た!友達から聞いたけど、塩水出てきたらしい」

「うわ、まじか!」


くだらない事をいつも椎名と話す。それが本当に楽しかった。椎名はいつもお得意のヘラヘラ笑いをする。

つられて私もよく微笑むようになった。

クラスでは生徒指導によく呼び出される2人、と近寄り難い認識を与えてしまったけど、そんな事はなく普通に私と椎名は馴染んでいた。


私と椎名が付き合うようになったのは突然だった。



5月に入って間もない頃、体育の授業は男女別で行なわれていて授業が終わり更衣室で着替えているとクラスの女子に言われた。



「椎名くんといのちゃんってどういう関係?」

「もしかして付き合ってるのー!?」

「いつも一緒にいるもんねーっ!!」


キャーッと、一気に更衣室はその話題で盛り上がった。私は付き合ってない、と苦笑いして逃げるように更衣室から出た。


女子の恋バナの食い付きようは鯉がエサに食い付くより元気が良いなと思ったぜ。うん。


そして、教室に戻ろうとした時。男子は女子よりも先に終わっていて教室にいた。教室から聞こえたのは、


「はるって瀬田さんと付き合ってるのか?」

「え!?やっぱり!?」

「お似合いだぜぇ〜!」


男子も女子と同じではないか。女子よりたちが悪いのもいるし。


「椎名〜、上手くやれよ〜?」


……おいおい。私、どうしたら良いのだ。そして、椎名が付き合ってないよ、と私と同じように苦笑いしたのを聞いて私は教室のドアを開けた。

もちろん、話題の私が教室に戻って来たのだから注目を集めないわけがないのですぐに私は教室に戻って来てしまったのを後悔した。


私と、椎名をからかう声が教室に飛び交う。


「お〜、嫁が帰ってきたぞ〜」

「ひゅーひゅー!」


何がひゅーひゅーだ。アホか。


もちろん私は不機嫌で。椎名はヘラっと笑っていた。






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