十日目の判決 -完-
椎名が私の後を付いて来るかたちで私たちは校門を出た。
この間に私と椎名が言葉を交わすことなかった。
気まづくはない。椎名には独特な雰囲気がある、椎名の空気感を私は嫌いじゃない。
椎名には4歳の妹がいる。椎名がお兄ちゃんとか笑ってしまうけど。
椎名はずっとお母さんと二人暮らしだったと言っていた。椎名がどんな気持ちで生活してきたのか分からないけど、椎名は何だか私よりも世の中というものを分かっている気がする。
椎名はヘラっとしていて頼りない感じだけど誰よりも大人っぽい所がある。
いや、でも。全体的に子どもなんだけどな。
どこからが大人でどこまでが子どもなんて私には分からないし考えられないけど、大人でもこの人って子どもだよなって思う所があると思う。そういう所は椎名は大人なんだと思う。
大人にはないような大人ぽいところを椎名は持っている。
そしてそんな大人っぽいところを持ってるからこそ椎名は誰よりも子どもっぽく見える。
無邪気というか、何か…。
自分で言っててよく分かんないな。これ。
私が後ろを向くことなく歩いていると、
いきなり後ろから右手を掴まれた。
え、なんだ…。
そのまま、後ろへ引き寄せられて椎名の隣に並んだ。椎名の仕業か。びっくりした。
束の間、私の手に触れている手は指を絡めた。恋人繋ぎというやつか。
私は椎名のほうを向くと、いつもと変わらない椎名がいて笑った。
妖怪スピーカーよ、今日は結希の好きな犬種でも分かるんじゃないか。