十日目の判決 -完-
椎名は私の彼氏だ。
その、椎名は今。結希の隣に並んで歩いている。
妖怪スピーカーと椎名が顔見知りだとは聞いた事がない。多分、椎名のその惹かれる容姿に妖怪スピーカーは認知していたのだろう。だから、椎名を知っていて椎名だと分かったのだろう。
「君は、どうするんだ」
椎名と結希のほうをじっと見ている妖怪スピーカーに聞いた。
「ん〜!!ケケケッ!今日はもうおれ帰る〜!!!ギャハハ!!」
「…は?え、ちょ…」
妖怪スピーカーは笑い叫ぶと結希と椎名がいるほうとは逆のほうへ行ってしまった。
…消えるの速いな。私が止める間もなかったぞ。
結希と男が一緒にいるのを目の当たりにして、
前にも見かけた男の正体が分かって、
妖怪スピーカーは、笑うだけで
その2人の中へ飛び出て行く、
なんてことは…しなかった。
別に私は妖怪スピーカーなら直接その場へ出て行き真実を突き止めたりするんじゃないかなとか思ってたわけじゃない。
そりゃそうだ、
あのゲラゲラ笑うスピーカーだって人間なんだ。
怖いって言ってたんだ、怖いんだ。
どんな結果であれ、それを聞くのには勇気がいる。
真実を知るには覚悟を決めなければならないのだ。