十日目の判決 -完-
私はずるい。
妖怪スピーカーが結希の浮気疑惑の話を持ち掛けてきた時にはもう、ずるかったんだ。
椎名がもしも、
結希がもしも…
私は考えたくない。だけど考えてしまう。
椎名は私の彼氏だ。
結希は妖怪スピーカーの彼女だ。
恋愛は人を臆病にさせる。
2人の関係に何かあると、まだ
…決まったわけじゃない。
浮気とかそんな大きなことは言えない。
2人が一緒に居たってだけで、
何かを決めつける証拠にはならない。
私はどうしたいんだ、
…どうしたらいいんだ。
自然と足は結希と椎名の方を追っていく。
2人の表情は見えない、
何を話しているかも聞こえない。
お願いだから…
妖怪スピーカーのことが
大好きなはずの素直な結希は消えないで。
私は何にこんなにも胸を苦しめているんだ。
一瞬、強い風が吹いて椎名の柔軟剤の匂いが
鼻をかすめた気がした。
結希と椎名は駅まで歩くと、それぞれの帰り道へと別れた。
2人は特別、何かをするような事はしなかった。