十日目の判決 -完-
「いの、」
何だ。
椎名に呼ばれて、立ち止まって椎名の方を見る。
いつかと同じように椎名の髪は照らされてキラキラしていた。
「誕生日、おめでとう」
ヘラっと椎名は笑顔を見せる。
「…ありがと。」
お礼を言うと、椎名が私にプレゼントを渡してくれた。もう一度、私は椎名にお礼を言う。
今日は、私の17歳の誕生日だ。
5月20日、忘れていたわけではない。
そこまで頭に入れていなかった、今日が5月20日だってこと。
確かに今日は、私の誕生日を知っている友達はおめでとうと声かけてくれていたし私もありがとうと言葉を交わしていた。
ただ、最近考える事がありすぎて自分の誕生日なんかには頭が回らなかった。
「もしかして誕生日忘れてた?」
あまりにも私が驚く表情をしていたのだろう、椎名が聞いてきた。
「いや、覚えてる。なか開けても良い?」
私は椎名から貰ったプレゼントの包みに目線を落とす。
「いいよ」
椎名は柔らかい声で答えた。椎名の声は低くも高くもない声をしている。他の人とは何処か違う声色だと思うのは私だけだろうか。私だけか。
私は受け取った包みを開けて中から箱を取り出すと、
箱を開けた。
腕時計だ。
思わず、椎名を見上げた。
「これ、良いのか?」
だって、これ…私が好きなファッションブランドの腕時計だ。
外国の有名な高級ブランドほど高くは無いものの、私たち高校生からすればそれなりの値段はする。
私はずっとこの腕時計欲しかったからどれくらい高いのか知っている。高校生の私には買えないと諦めていたのだ。
「誕生日だし、これくらいしないとね。」
ヘラっと、また椎名は笑って言った。
「ありがとう、大事にする。」
椎名から貰えるなんて思わなかった。
どうしよう…すごく嬉しい。
貰った物の価値とかじゃなくて、
椎名から貰えた事が、椎名に祝って貰えた事が、
私はちゃんと嬉しいのだ。
幸せな気持ちになって私は笑った。