絆の軌跡
消失
ゆっくりと目を開けると、
小さな窓に掛かっているカーテンの隙間から、細く光が射し込んでいるのが見えた。
もう朝か。
ゆっくりと身を起こすと、僅かにベッドが軋む。
懐かしい夢を見た。
あれは六歳の誕生日。
でも記憶も夢も曖昧で、どんな話だったのか…。
夢の続きを覚えてはいないが、父がこんなことを教えてくれたのを思い出した。
『誕生日はその人の節目なんだ』
生まれた瞬間は人間としての始まり。
一歳は自我の芽生え。
二歳は言葉を覚える。
三歳は…
何だっけ、と頭をかきながら衣類が入っているタンスを開ける。
中の服は全て母の手作りだ。
適当に黒いシャツワンピと短パンを取り出して寝巻きを脱ぐ。
靴下、ワンピースを着て、茶色い太めのベルトをキュッと締める。
これだけでは少し寒い。
ということで、唯一持っているカーキ色のロングコートを羽織った。
ベルトに工具やナイフ等が入ったポーチを取り付け、コートのポケットに突っ込んであった茶色い薄手の革手袋をして身支度は完了である。