絆の軌跡


身支度を整えると、窓の少し前にある床下を押し開けた。

床下…というよりは、下から見れば天井板である。

壁側に置いてある木製の梯子を下ろし、足場を作る。

一段一段に足をかけながら降りると、そこは休憩室。


ここは私達家族が管理する牧場の端にある物置兼休憩小屋だ。

少し農具から土臭い匂いはするがまあまあ快適。

山の斜面にあるこの広い牧場にひとつしかない休憩小屋の屋根裏が、私の部屋だ。

確かこれもいつかの誕生日に与えられたような…気がする。


梯子を持ち上げ、その先でしっかり入り口を締める。

それを持ってテーブルと座布団しかない休憩室の扉を開けてブーツを履く。

梯子はいつも農具とともに物置に置いておくのだ。


鍬やシャベル置きの間をすり抜けて外に出ると、寒さと静けさが出迎えた。

ほんの少し動悸がする。


静かすぎて…怖い。

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