絆の軌跡
聞き慣れた鳴き声。
これは…
「なんだ…」
家の主要家畜…羊。
気付けばあちこちにいた。
目視できるだけで10頭程はいる。
がっくりと肩を落とす。
…すり減った精神を返してくれ。
しかし良く考えれば、それはおかしな光景だった。
昨日夕方に羊小屋に放牧していた全ての羊達を入れたはずだ。
それが私の仕事だからだ。
朝食後に羊小屋の扉を開けて放牧、
昼は自由にさせて、夕食前にルティナと犬のコリーと共に羊を小屋に戻す。
毎回、数を数えて中に入れている。
こんなにも羊を外に残すなんて…あり得ない。
再び動悸が始まる。
誰かが放牧した?
誰が?
お父さん?お母さん?
役割はしっかり決まっている。
なんで放牧したんだろう。
とにかく、家に行こう。
勘を頼りに、ルティナを走らせた。