血の雫








懐かしいなぁ…。

思いだしたくないことだけど、ね。





僕って本当に、運がないよね。

性格は気弱だしへたれ、だし。

思っていることを言うこと出来ないし。

嘘つくことしか、人に優しく出来ないんだから。





本当にもう、嫌になっちゃうよ。

どれくらい自分を嫌いになれば良いんだよ。

どれくらい不幸になれば、神様は気が済むんだよ。

どれくらい堕ちれば、僕は幸せになれるんだよ。





ずっと、ひとりだった。





母さんが僕を生んだせいで亡くなって。

父さんは仕事仕事で、僕のこと構わないし。

使用人は余るほどいたけど、決して本心は言わないで嘘で塗り固められたことしか言わないし。

学校に行けば1位を取ることに必死になって、友達なんていないし。

いるのは僕をいじめて楽しむクラスメイトだけだった。




耐えられなくて人間界に逃げた。

“あの子”は僕に優しくしてくれた。

初めて僕に優しくしてくれる存在だった。




それなのに。

“あの子”は僕が吸血鬼だと知った途端、僕を遠ざけた。

目に涙を沢山貯めて、クラスメイトと一緒になって僕を責めた。





『化け物!』





そう叫んだ“あの子”の瞳が、忘れられない。








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