血の雫
人間は確かに学校で習った通り、怖い存在だった。
だから自分のいる世界に戻った。
同時に戻ってきたのは、学校で毎日繰り広げられるいじめだけだった。
何も言えなかった。
何も抵抗できなかった。
問題を起こすわけにはいかなかったから。
ただでさえ仕事で忙しい父さんの邪魔なんて出来なかった。
だからといって、使用人に言えるはずがなかった。
僕はただの、“ドロップ様”でしかないのだから。
全てを諦めていた時、父さんから再び人間界へ行くことを言われた。
また辛い思いをするのかと思って行きたくなかったけど、父さんに逆らえるほど僕は強くない。
渋々、人間界へ降りた。
そこで僕は、アキナに出会ったんだ。
優しいアキナに、僕は惹かれていた。
同時にアキナのクラスメイトにも。
あんなに楽しい日々は初めてだった。
でも、僕は最悪なことをした。
学校でいじめられたことや、“あの子”に化け物呼ばわりされたことよりも辛かった。
哀しかった。
それほど、僕は学校での日々が楽しかったんだ。
学校はいじめられる場所としか見ていなかったから。
あんなに楽しい場所なんだって、初めて知ることが出来たんだ。
それなのに。
僕はアキナを傷つけたんだ。
クラスメイトを“オメデタイ連中”呼ばわりしたんだ。
許されるはず、ないじゃないか……。