血の雫
一刻も早く立ち去ろうと、右手で起き上がろうとするけど。
すぐに僕を、軽い眩暈が襲った。
一瞬だけどふらつくと、女が僕の両肘を掴み、支えてくれた。
先ほど額に当てられたのと同じ、ひんやりした手が当たる。
「駄目だよまだ起きちゃ」
「……行かないといけないんです」
「どこに?」
どこに?
そう聞かれて思いとどまる。
僕は一体、どこへ行こうとしているのだろうか?
人間界へは普段吸血鬼は降り立たないから、普段吸血鬼たちがどこで寝泊まりしているのかわからない。
いちいち吸血鬼界に帰るのか?
そんな面倒なことはしないだろう。
…僕、どうすれば良いんだろうか?
「どこに行くの?」
「…わからない……」
そうだよ。
父さんに詳しいことも聞かずに出てきちゃった。
…一体何しているんだ僕は。
自分で自分が嫌になって来た……。