血の雫
よく見たらアキナの右腕に、血を取った後を隠すようなガーゼが貼られていた。
「……ッ」
「アキナが自分から血をお前にあげたいと言ってきたんだ。
“ドロップを助けられるのなら、あたしのいくらでもやる”ってな」
アキナ……。
どうしてそこまで、僕に優しくしてくれるの…?
僕のこと、怖いと思わないの…?
『嫌だ!』
『化け物!』
『来ないで!』
『近寄らないで!』
ふと脳内に“あの子”とクラスメイトの声が響いて、僕は顔をしかめた。
アキナは“あの子”のように、僕を化け物呼ばわりしないんだね…。
その上、自分を犠牲にして助けようとしてくれた…。
本当にアキナは、どこまでも優しいんだから…。
僕に勿体ないぐらい……。
「……お前の過去も、お前の父親から聞いた」
「え…?」
「お前が過去に学校でされたこととか、人間界に以前降りた時にされたこととか、お前の母親のこととか、全部聞いた。
勿論、アキナも全部聞いている」
そっか…。
別に隠していたわけじゃなかったから、良いんだけどね…。