血の雫
「高校ではないみたいだけど、親しい友人はいないみたいだな」
「…………」
「アキナの両親は物心ついた頃から仕事で色々な所飛び回っていたみたいだから、アキナはずっと1人だったんだ。
だからドロップを放っておくことが出来なかったんだろ」
自分と同じく、ひとりぼっちだったんだから。
…拓也さんはそう言うと、病室を出て行った。
それと同時に、アキナがゆっくり体を起こした。
「ドロップ……」
僕は起きたばかりのアキナを、抱きしめた。
そしてさっきから我慢していた涙を、あふれさせた。
アキナになら、何でも言えるし、アキナの前なら素直になれると思ったんだ。
「ドロップ…大丈夫?」
「ごめんね…アキナ……」
アキナのこと、僕は何も考えていなかったよ。
自分が傷つくのを恐れて、自分のことしか考えていなかった。
アキナが僕を遠ざけると、決めつけていたんだ。
かつて僕を遠ざけた、“あの子”のように。
「アキナッ……」
僕は一体、何を勘違いしていたんだろう。
アキナは“あの子”と同じ人間だけど、
中身は全く違うのに。
今更気が付くなんて…遅すぎるよ、僕。