血の雫
「ドロップに人差し指噛まれた時は、確かに驚いたし、恐怖心もあったよ」
僕は当時を思いだして、俯いた。
「だけど、ドロップは吸血鬼だから。
血を吸わないと、生きて行けないんでしょう?
ドロップのお母さんの亡くなった話、お父さんから聞いたよ」
そうだ。
僕は吸血鬼だから、血を吸わないと生きて行けない。
だけど、これ以上僕は……。
「……嫌だ…」
「ドロップ?」
「僕、吸いたくない…。
死ぬってわかっていても、嫌だ…。
アキナを…傷つけたくない……」
アキナの傍にいたい。
いつか帰らなければいけないことは、わかっている。
だけど、傍にいたら必ずアキナを傷つけてしまう。
それは正直…耐えられない。
「あたしは、ドロップが消える方が嫌だよ」
「アキナ……」
「あたしの血なら、いくらでもあげる。
ドロップのこと考えたら、そんなの楽勝だよ。
ドロップと離れる方が、あたしは辛い……」
アキナは流れ落ちた涙を袖で拭いた。