血の雫








教室の扉は、閉まっていた。

いつも教室へ向かう途中に誰かしらクラスメイトに会うのに、今日は全く会わなかった。

閉まっている教室は、何もしていないあたしでさえも入るのに少し躊躇った。

でも、あたしが躊躇っていては駄目。





あたしは思い切り扉を開いた。

一斉にクラスメイトの視線が集まる。

だけど入ってきたのがあたしだったから、皆普通に「おはよう」と声をかけてくれた。

あたしも礼儀として「おはよう」と返した。




自分の席へ行って、鞄を置く。

後ろを振り向くけど、誰もいない。

ドロップはやっぱり入るのに緊張しているみたいだ。




「木之上……」




橋本くんがあたしに話しかけてくる。

しかしその目は、異様なほど泳いでいた。

あたしは頷いて、前の扉へ向かう。

そして廊下に佇むドロップの手を握った。

無言で頷く。

大丈夫だよ、という意味を込めて。




ドロップは小さく頷くと、あたしと一緒に教室へ入った。

あたしがさっき入ってきた空気と違うのは、一目瞭然だった。

ドロップは今にも泣きそうな顔をしていた。




…本当ドロップって、気が弱いよね。

そんな所も可愛くて、好きなんだけど。

絶対言わないけど。








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