血の雫
「……よっ!」
橋本くんがぎこちなく、片手を挙げる。
その声に、ドロップは涙がすでに溜まっている瞳を向けた。
そんなドロップに、橋本くんが吹きだした。
「ハハッ、何泣いているんだよ」
「……ッ」
「よって言われたら、同じように返すんだぜ?」
橋本くんがニコッと笑って親指を立てる。
その光景に、今度はドロップが吹きだした。
「……よっ?」
「何で疑問系なんだよ」
「だ、だって言ったことないから」
「よっ!だ。言ってみろ」
「……よっ!」
「んーん。
ぎこちねーけど…まぁ良いか!」
橋本くんがドロップに駆け寄る。
「俺、橋本寛太(かんた)。
改めてよろしくな、ドロップ」
「……うん!」
橋本くんが差し出した手を、ドロップが握る。
それを合図なのか、クラスメイトが皆笑った。
さっきまでの静かな空気が、嘘のようだった。