血の雫
「ドロップ、どうしたの…?」
変わりすぎたその容姿に、あたしは戸惑っていた。
「僕…吸血鬼やめたんだ」
テヘッと笑うドロップ。
可愛い…。
…じゃなくて!
「吸血鬼をやめた!?」
「うん。
僕、人間になったんだ」
嘘…。
よく見れば、歯磨き粉のCMみたいに歯を見せて笑うドロップの歯に、あの吸血鬼らしい長い牙はなくなっていた。
「吸血鬼のままでも良かったかなって思ったんだけど、吸血鬼のままだといつか帰らないといけないから…。
僕、アキナと離れたくないからね」
「そんな簡単に、人間になれるの……?」
「そんな簡単じゃないよ。
少し時間が必要だったから、昨日帰ったんだ。
朝のホームルームに間に合って良かったよ」
ドロップ…。
「そんな簡単に決めちゃって良かったの…?」
ドロップは家を継ぐべき立場のはずだ。
そんな簡単に決断して良いわけない。