血の雫








タオルを持って部屋へ戻ると、彼は起きて辺りを見渡していた。

あたしを見つけると、どこかへ行こうと立ちあがろうとしていた。

だけどすぐに体がふらついたので、あたしは支えてあげた。




まだ少しだけど体が熱い。

火照っているみたいだ。

そんな体でどこか行くなんて、無謀だ。





「駄目だよまだ起きちゃ」

「……行かないといけないんです」

「どこに?」





普通の質問をしたと思う。

それなのに彼は、考えるように黙り込んでしまった。



再度尋ねると、彼は「わからない」と呟いてしまった。




わからないって…どういうこと?

記憶喪失ってことなのかな?




家族のことや、どこから来たのかも聞いてみる。

その質問にも、彼は曖昧に答える。

唯一答えてくれたのは、ドロップという外国人かと思われる名前のみ。

それ以外は曖昧な答えしかくれない。




あたしは医者じゃないし、家族も医者じゃないから詳しいことはわからないけど。

彼は記憶喪失だと、あたしは自己流に判断した。

幸い明日は休みだから、医者に行ってみようかと言い、あたしは部屋を出た。







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