血の雫








ドロップくん、か。

あたしは床に座りこみながら、考えてみる。




どこから来たんだろう?

見た目も名前も外国人っぽいけど、日本語は通じるみたいだな。

ハーフなのかな?

それとも、帰国子女的な存在?

…わかんないや。




そういえば、ご飯作らないとな。

あたし、料理はどちらかと言えば出来る方。

両親が海外へ行くと同時に覚え始めた料理。

他人になんて振舞ったことないけど、味に自信がないわけではないから。

多分人並みには上手く作れると思うから。

あたしは台所に立ち、簡単なオムライスを作ることにした。




作りながら思う。

誰かが一つ屋根の下にいるのは、久しぶりな感覚のことを。

話す友達はいるけど、お互いの家に泊まるような親しい関係の友達はいないあたしだから。

どこの誰かわからない人でもいるというのは、久しぶりすぎる感覚なのだ。

高校入学と同時に海外へ行った両親で、あたしが今高校2年生だから、かれこれ2年は1人で家の中で過ごしてきたんだ。

誰かが同じ空間にいるって、凄く良いことなんだなって改めて思えた。





ドロップくんが記憶喪失とか、詳しいことはわからないけど。

ドロップくんが家の中にいるのは今だけかもしれないから。

今だけの貴重な気持ちと感覚を、あたしは覚えていたいと思った。




この、

あたたかい嬉しさを。








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