血の雫







「ぅわっ!?」

「か、風強いね!
少し貸して」




僕の手から“どらいやー”を取ったアキナが、赤いボタンを押して温風を止めてくれた。

そして丁度良い温度と風の強さに設定してくれた。

…しかしその様子を僕は、見ることが出来なかった。





「ドロップ?大丈夫?」




その場に額を押さえてしゃがみ込んだ僕の頭上から、アキナの声がする。

その声の高さや強さは、今日木の下で僕に話しかけてきたアキナの声と似ていた。

これがもしかして、心配する声?

以前人間界で1年間暮らしていたというルカさんが話していたことかな?





『ドロップ様。
人間というものは恐ろしいものばかりではございませんよ。
確かに簡単に人を傷つける人間や、差別する人間はおります。

ですが、人間と言うものは基本優しい存在です。
誰かが困っていると、手助けと言うものをしてくれます。

「大丈夫ですか」と心配する、優しい言葉をかけてくださるんですよ』





以前、ルカさんに言われた言葉。

その時人間全てを殺してやろうと考えていた僕は、その言葉を聞いてやめたんだ。

だって“あの子”も、最初は優しかったのだから……。





アキナの今の声は、心配する優しい言葉…?

あの木の下で会った時の言葉も?

心配する言葉をかけてくれたのか?




初対面の、僕に?








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