血の雫
「ドロップ……?」
僕と同じくしゃがみ込み、不安そうな声を出すアキナ。
「大丈夫?」
僕は大げさと突っ込まれそうなほど、強く首を縦に振った。
駄目だ。
いくらアキナが優しい言葉をかけてくれたとしても。
…この額に走る傷を見られるわけにはいかない。
長い前髪で、隠してきた傷。
それが今、もう少しでアキナに見られそうになっていた。
僕は額の傷に触れ、それを隠すように前髪を全て下ろした。
見えづらくても良い。
この傷が見えなければ。
僕は前髪を直し、額の傷が隠れたことを手で確認し、立ちあがった。
「ごめんなさい。
いきなり強い風が吹いたらから、驚いてしまったんです。
なんともありませんから」
「そう?」
「“どらいやー”、貸してもらえますか?」
「うん。
今度は、強い風吹かないと思うよ」
アキナの言う通り、今度は優しい風だった。