血の雫
夜もだいぶ更(ふ)けてきた頃。
人間は眠る時間だけど、僕ら吸血鬼は違う。
今が最も動ける、活動の時間帯だ。
僕はそっと、ベッドから降りる。
そしてゆっくりと、自分の足を浮かせた。
吸血鬼は人間と見た目は変わらないけど、やっぱり吸血鬼。
人間が持たないような能力を持っている。
こうやって、自らの体を浮かせることも、可能だ。
だからといって、鳥みたく大空を飛べるほど高く舞い上がるわけではない。
もう少し力をいれれば可能だけど、今は家の中だから、そんなに浮かばない。
足が床につかないぐらいの高さだ。
ゆっくり音をたてないように静かに扉を開け、先ほど調べたアキナの部屋へ向かう。
扉の前に立ち、同じよう右耳を扉に当てるけど、物音はしない。
僕はゆっくりと、扉を開けた。
良く言えばシンプル、悪く言えば殺風景な部屋だった。
女らしいぬいぐるみやピンク色の家具などはなかった。
白に青い花柄模様の布団をかぶって、アキナは寝ていた。
電気は点いていないけど、吸血鬼は梟(フクロウ)のように夜でもよく見える目を持っているから。
足元に散らばっているプリントや本などを踏まないで、アキナの元へ歩けた。