血の雫
「ご馳走様って言うのはね、作ってくれてありがとうございましたって意味があるんだよ」
作ってくれて、ありがとうございました…?
そんなこと、家では思ったことなかったな。
作ってもらえることが、幼い頃から当たり前だったから。
「ドロップは、そういうの家では言わなかった?」
「……」
僕は頷いた。
言うこと自体、知らなかった。
「これからは言ってあげると良いよ。
作ってくれた人も、そう言われると嬉しいと思うから」
嬉しくなる…。
「これから、言ってみる」
「それが良いよ!
じゃ、準備して病院行こうか?」
「何でですか?」
「ドロップが記憶喪失なのかどうか、調べてもらうため。
それとも、自分がどこの誰でどこへ行くのか、思いだした?」
僕は俯いて首を振った。
忘れてはいない。
だけど、吸血鬼界のことなんて言えないから。
そのことは、忘れている設定にしよう。