血の雫
そう決めた僕は、家を出る支度を終えたアキナを追い、家を出た。
「日差しに当たるのが苦手だ」と言うと、アキナは“ひがさ”と呼ばれるものを貸してくれた。
それを使うと、不思議と辛くならなかった。
「ドロップは吸血鬼みたいだね」と言われ、それには焦ったけど。
数分歩くと、大きな白い建物に着いた。
これがアキナが言っていた、病院らしい。
病院と呼ばれるものは吸血鬼界にもあるので、病院が担う役目を、僕は知っていた。
中には多くの人がいた。
アキナが受付をしてくると言ったので、僕は待合室に座って待つことにした。
吸血鬼界では、こんなに大勢の人が病院内にいる光景は見たことない。
人間は病院にすぐ集まる、少し弱い存在なのかもしれない。
もしかしたら色々弱点のある僕ら吸血鬼の方が、人間より強いのかもしれないな。
一応吸血鬼は、不老不死だから。
でも血が吸えなくては、吸血鬼もいずれ亡くなる。
吸血鬼を退治しようと燃える連中もいる。
その連中に捕まり逃げなければ、吸血鬼は亡くなる。
必ずしも不老不死というわけではないのだ。
不老も、吸血をすることによって約束されるのだから。
吸血鬼は、その名の通り、吸血を必要とする。
吸血をしなければ、吸血鬼は死を意味する。
それほど、血が吸えないというのは大変なことなのだ。
僕は、ムーンライト家のために、生きないと。
ムーンライト家がなくなれば、いつしか吸血鬼界は滅びてしまうと言われるほど、ムーンライト家は必要な家なのだ。
僕はその当主になるべき存在。
今日の夜こそ、アキナの血を吸おう。
それがムーンライト家を継ぐ身である僕の、使命なのだ。