血の雫







そう決めた僕は、家を出る支度を終えたアキナを追い、家を出た。

「日差しに当たるのが苦手だ」と言うと、アキナは“ひがさ”と呼ばれるものを貸してくれた。

それを使うと、不思議と辛くならなかった。

「ドロップは吸血鬼みたいだね」と言われ、それには焦ったけど。





数分歩くと、大きな白い建物に着いた。

これがアキナが言っていた、病院らしい。

病院と呼ばれるものは吸血鬼界にもあるので、病院が担う役目を、僕は知っていた。




中には多くの人がいた。

アキナが受付をしてくると言ったので、僕は待合室に座って待つことにした。




吸血鬼界では、こんなに大勢の人が病院内にいる光景は見たことない。

人間は病院にすぐ集まる、少し弱い存在なのかもしれない。

もしかしたら色々弱点のある僕ら吸血鬼の方が、人間より強いのかもしれないな。

一応吸血鬼は、不老不死だから。




でも血が吸えなくては、吸血鬼もいずれ亡くなる。

吸血鬼を退治しようと燃える連中もいる。

その連中に捕まり逃げなければ、吸血鬼は亡くなる。

必ずしも不老不死というわけではないのだ。

不老も、吸血をすることによって約束されるのだから。





吸血鬼は、その名の通り、吸血を必要とする。

吸血をしなければ、吸血鬼は死を意味する。

それほど、血が吸えないというのは大変なことなのだ。




僕は、ムーンライト家のために、生きないと。

ムーンライト家がなくなれば、いつしか吸血鬼界は滅びてしまうと言われるほど、ムーンライト家は必要な家なのだ。

僕はその当主になるべき存在。




今日の夜こそ、アキナの血を吸おう。

それがムーンライト家を継ぐ身である僕の、使命なのだ。








< 34 / 141 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop