血の雫
「ドロップ、行こう」
「はい」
アキナに呼ばれ、その後をついていく。
そしてアキナは、白い横開きの扉を、簡単に開いた。
かなり慣れた手つきだ。
「拓(たく)ちゃーん」
「アキナじゃないか。
どうした?」
中にいた白衣の男の人と、親しそうに話すアキナ。
知り合いなのかな…。
「実は診てもらいたい人がいるの。
ドロップよ」
「は、初めまして」
頭を下げると、男の人は不思議そうに僕を眺めた。
「驚いたな。
外見は日本人離れしているというのに、日本語ペラペラだな。
日本に来て、随分長いだろ」
僕は黙って俯いた。
“にほん”という存在が何なのか、僕はわかっていないから。
「拓ちゃん。
ドロップはね、自分の名前とかはわかるのに、どこから来てどこへ行くのかわからないの。
あたしが思うにね、記憶喪失だと思うんだ」
男の人はアキナを見て目を丸くした。