血の雫
「記憶喪失、か。
どうしてアキナが、そのドロップ?くんと一緒にいるんだ?」
アキナは僕と出会った経緯を話した。
「なるほど。
それでアキナがドロップくんを呼んだのだね。
ドロップくん、アキナ。ひとまず座って」
男の人に勧められた椅子に、僕らは座った。
「まずは自己紹介だね。
初めましてドロップくん。
ボクは宇津木拓也(うつぎ・たくや)。
アキナのご両親の友達の息子だ」
アキナの両親の友達の息子?
随分遠い関係だな。
でも、アキナとは仲良いみたいだ。
「家もアキナの家の隣だから、何かと良くしてもらっているよ。
ボクの両親も医者で、色々忙しいからね」
「拓ちゃんの両親はとても腕が良い医者なのよ。
それを幼い時から見ていた拓ちゃんも、医者希望なのよ」
「医者希望じゃない、もう医者だ」
「そうなんですか……」
両親の姿を、幼い時から見てきた…か。
僕には考えられないな…。
「さてドロップくん。
本名は?」
紙とペンを用意した拓也さんは、僕を見て微笑んだ。