血の雫
「ドロップ・ムーンライトです」
「か、変わった名前だね…。
それは、覚えていたのかな?」
「はい」
「どこから来たの?」
「…覚えてないです」
「どこへ行く予定だったの?」
「…わかりません」
本当は知っているけど…ね。
「アキナと出会ったのは木の下だったみたいだね。
どうしてそこにいたの?」
「気が付いたらいたんです」
これは本当のことだ。
目が覚めたら、そこにいたんだ。
「荷物を持っていたって、さっきアキナが言っていたけど。
その荷物は、誰に持たされたの?」
「…わかりません」
「ご家族は?」
「…父しかいません」
「そのお父さんは、どこにいるの?」
「わかりません……」
吸血鬼にいる、なんて口が裂けても言えないね。